オススメの最新本「伊礼智の住宅設計作法III 心地よさの ものさし」レビュー

心地よさのものさしおすすめの本
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家づくりを考え始めてから3年、工務店と契約してから1年が経ちました。youtubeの発信者が増えたおかげで学べるツールが増え、家づくりの知識はかなり身につけたと自負していました。

しかし伊礼さんは「心地よさのものさし」の冒頭、40年以上の設計を学んだ先にある「経験の重要性」を記しています。

家づくりの数値や設備について知識として学ぶことはある程度できますが、それを自然と人間・社会とどのようにバランスをとるか

施主の今意識している価値観、意識していない価値観、将来変わるかもしれない価値観、それを読み取る経験と知恵。

心地よさのものさし」はそのためのヒントがいくつも示されています。

伊礼智の住宅設計作法シリーズ

伊礼さんは既にいくつかの本を出されています。いずれも素晴らしい本で、建築の知識が少ない私でも楽しく読めるものばかりです。

その中で「住宅設計作法」というシリーズがあり、これまで2冊発売されていました。

伊礼さんの設計思想とそれを実践するための方法が余すことなく書かれていて、設計者のかたはもちろん、これから家づくりをされるかたインテリアの参考になる写真を探しているかたまた建築以外のエンジニアの方にもオススメの書籍です。

伊礼智の住宅設計作法: 小さな家で豊かに暮らす

住宅設計作法Ⅰ」では副題にある「小さな家で豊に暮らす」ための方法と考え方が示され、設計者が施主(クライアント)にどのようにアプローチするべきか具体的な手法を提案されています。

施主のかたは建築士がどのようなことを考えているか、建築家目線の土地選定の基準を学ぶことができます。

伊礼智の住宅設計作法II:確かな住宅設計のための一問一答

住宅設計作法Ⅱ」は少し形を変えて、質問に伊礼さんが答えながら家づくりを学んでいく本。

これから家づくりをされるかたは、いくつもの疑問が湧いてくると思います。

そんな方に向けても伊礼さんの答えは多くの示唆に溢れています。

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伊礼智の住宅設計作法III:心地よさの ものさし

心地よさのものさし」はこれら住宅設計作法シリーズの3冊目として新しく発売されました。

本作ではこれまでの2冊で述べられてきた伊礼さんの設計作法と、あまり触れられなかった「断熱・機密」と言った住宅性能の基準とのバランスをどのようにとってきたのか詳しく解説されています。

性能を何よりも重視される方に是非見てもらいたい本であると同時に、それほど性能に興味や知識がなかった方にもオススメできる本になっています。

性能と意匠や住まいごこちは両立するものであり、バランスが必要であることを学ばせてもらいました。

伊礼さんの耐震・断熱性能基準

「心地よさのものさし」で伊礼さんが標準としている性能基準は

  • 耐震等級3(許容応力度計算)
  • 外皮性能「G2」(断熱性能)

全ての建物がこの基準になるわけではないですが、目指す目標とのこと。

自分も家づくりを学ぶ中で、耐震等級3・外皮性能「G2」が必要と考えていたのでとても納得できました。

過去にエコハウス大賞の審査委員をしたことでこれらの性能が重要であることを再認識されたと前書きで書かれています。

それぞれの数値性能については過去記事で解説しています。

⇨ 「C値」「Ua値」「Q値」「G1」「G2」は住宅性能(特に断熱)を表す数値

震度7でも『【認定】耐震等級3』のエコハウスが家族と財産を守る!

本書の中で紹介される住宅はすべて性能値が記載されていますので、素晴らしい意匠と性能のバランスが取れていることが実感できます。

内と外とのバランス

経験がほとんどない初めての家づくりでは、分かりやすい数値性能に目が奪われてしまいます

性能だけを重視するなら弱点となる窓は極力少なく・小さくする必要があり、内だけにこもってしまう環境になりがちに。

伊礼さんは内と外のつながりをとても大切にされていて、部屋から窓、庭、駐車場、隣家、街とのバランスについても細部まで考えている様子が本書を読むことで伝わってきました。

建築家ではない施主ではこの感覚をつかむのは難しいため、良い建築家・建築士と出会う必要があります。

良い建築家と出会うためのヒントも本書「心地よさのものさし」の中にちりばめられていますので、伊礼さんの本を読んだ施主は良い建築士と出会う可能性も高くなるでしょう。

先人への感謝

伊礼さんの本は先人への感謝の言葉もとても多い。

東京芸術大学 研究室時代の師である奥村昭雄先生吉村順三先生は何度も顔を出し、先輩である中村好文さん宮脇 檀さん、益子 義弘さんも過去本の中で紹介・引用されていました。

心地よさのものさし」で印象に残ったのが「手馴れ」の大切さに永田昌民さんを紹介されていたことです。

永田さんへの敬愛が伝わり、永田さんがどのような方だったのか私も興味がわきました。

永田さんとお仕事をされた新建工舎設計さんのブログ ⇨ 永田昌民設計塾関連ブログ

華美さは控えめで、自然とのつながり居心地の良さを大切にされた住宅と人柄に自分も引き込まれました。

家づくりに対する新たな価値観(壊れたら直せば良い、直す楽しみ)も得ることができ、昨年発売されたこの本も思わず注文してます。

足るを知る

心地よさのものさし」の中で、伊礼さん設計の住宅が8つ紹介されています。

  1. 里山の平屋暮らし
  2. 甲府の家
  3. 福島の家
  4. くらしこの家とハナレ
  5. 諫早の家
  6. 近江高島駅の家
  7. つむぐいえ
  8. 魚沼の家

それぞれの家の紹介だけでも見ていて楽しく、多くの学びがあります。

ただ私が一番好きなのは住宅の紹介に挟まれる「こぼれ話」。

特に老子の言葉「足るを知る」が取り上げられているページは印象に残りました。

「足るを知る」ことは無理をしないこと

故奥村昭雄先生から教えていただいた言葉であり、パッシブデザインの極意と綴られています。

足るを知る」を心に留めておけば、家づくりはもっと楽しく楽になるのではないかと思い始めています。

先人の知恵を学び、たくさんの住宅や庭・街並みに五感を働かせ、自分の中で無理をしない「心のものさし」を作っていくことが良い家づくりには大切だと気づかせてくれる素晴らしい本でした。

豪華な対談、寄稿メンバー

荻野寿也(造園家)さん、岡本欣也(コピーライター)さんとの対談、前真之先生(東大)、西川公朗(フォトグラファー)寄稿が伊礼さんに対する別の視点を添えてくれます。

最後に

本を読み終えた後に目を凝らさないと見つけられないちょっとした仕掛けがあります。

見つけた時はとても嬉しくなり、歳を重ねてもこの感覚を忘れないようにしたいです。

出版記念公演の動画も公開されています。本の中身はもちろん、とても楽しいお話が聞けます。

「心地よさの ものさし」発刊記念Live

建築系youtuber本田さんとのzoom対談もオススメです。

伊礼さんのベストセラー「小さな家」70のレシピについて記事書きました。 ⇨ 小さな家は良いことだらけ!5つのメリット[コスト、土地、家事、地域、環境]

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